神戸のファンタジー その3

このリンクだと、ジャンプは上向きに飛ぶんだね。
…一緒に行った夫がそう言った。
もちろん、試合はテレビでしか見たことがないので、ショーとの比較などできるわけではない。
でも確かに、ジャンプポイントはリンクの端の隅にあって、リンクが狭いために助走から着氷までの距離が取りにくい。
そのためか、高く跳び上がって幅は取らずに下りてくるようなジャンプが多かったと思う。
なかには、あれだけのスペースしかないのに本当に跳ぶの?とひやりとしてしまうような選手もいた。
そんななかでもコンビネーションを跳んでくれた選手には、大きな拍手を送った。
もちろん、4回転を降りてくれたランビエールさんにも。

ハビエル選手はジャンプがなかなか決まらなくて、「マラゲーニャ」のあとには両手を合わせてごめんなさいをしていたし、フィナーレでもうまくいかなくて、涙をぬぐう真似をしていた。

世界選手権からずっとショーに出続けていて、疲れがたまっていて、調子がよくないのかもしれない。
それでも、ものすごいスピードでリンクを駆け抜けて行く姿に目を奪われた。
来シーズンはさらに磨いて行ってくれるだろう。

「マラゲーニャ」は、安藤さんが黒い衣装だったので、ハビエル選手も合わせて黒にしたのかもしれないけれど、やはりここは赤の方がリンクに映えてよかったと思った。
照明も暗めだったので、よけいにそう感じたのかもしれない。

安藤さんは、妖艶でエキゾチックな「マラゲーニャ」と、洗練され気品のある「バラード第4番」と、どちらも素晴らしかった。
彼女の存在感、遠くにいてもこちらまで迫ってくるような華のある魅力には、ため息が出るような思いがする。

織田信成さんは、吉田兄弟とのコラボ「Storm」ではリンクを躍動しきっていて、津軽三味線の迫力がそのままスケートになったようで素晴らしい!
けれど、もう一つのプログラムでは少し緊張していたように感じた。
まだ練習の途中なのか、少し難しいのか、どうなのだろう。

ボロソジャル&トランコフ組、あのインドのプログラムを、まさか見る事ができるなんて。
でも少し勢いがないようにも感じた。調子よくなかったのかな。



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リスフラン関節靭帯の三か月

<フィギュア>靱帯損傷の羽生が練習を再開

…日本スケート連盟の小林芳子・フィギュア強化部長は22日、左足甲の靱帯(じんたい)を痛めている男子の羽生結弦(ANA)について「ジャンプやスピンとまではいかないが、滑り始めている」と練習を再開したことを明らかにした。
羽生は4月に「リスフラン関節靱帯損傷」のため全治2カ月の安静、加療を要すると診断されていた。

羽生、練習再開…「氷に乗っている」と強化部長

…左足を痛めていたフィギュアスケート男子の羽生結弦(ANA)が、軽い練習を再開したことが分かった。
日本スケート連盟の小林芳子フィギュア強化部長が22日、「氷の上に乗っている」と語った。本格的なジャンプやスピンは、まだ控えているという。羽生は昨シーズン中に左足甲の靱帯(じんたい)を損傷し、銀メダルを獲得した今春の世界選手権後は練習拠点のカナダ・トロントで治療を続けていた。


少しずつ氷に乗りはじめているのですね。
ジャンプやスピンとまではいなかい、まだ控えている、軽い練習とあるので、あせらず調整してくれているのでしょう。
確実に治し、再発することのないように、じっくりとリハビリを続けているのなら、よかったと思います。

リスフラン関節靭帯。
まさか、そんな専門用語を覚えてしまうとは思ってもいませんでした。
自分の足の甲をさわってみては、このあたりかなと確かめて、ここが炎症したり切れそうになったらさぞ痛いのだろうと想像したりしました。
まして、あの重いスケート靴を履いて、重力に逆らってジャンプしようとするのなら。

リスフラン関節、ショパール関節。
どちらもフランスの外科医の名前だとかで、妙におしゃれに聞こえてしまうのも不思議な感じです。
権威ある高名な医師であったろうその先生に、どうか、もう痛める事のありませんようにとお願いしたい気持ちになります。

全治二か月というけれど、世界選手権からそろそろ三か月になります。
もちろん、二か月ですぐにスケートができるわけはないと思います。
でも、フィギュアスケートTVの報道や、神戸でのコラボレーションが決まっていたことからすると、もしかしたら、一度は練習を再開しショーにも出ようと試みていたのかもしれません。

そんな無理を続けないで、休むことを選択してくれたのなら、それで本当によかったと思います。

羽生選手にとっては長い三か月だったと思いますが、その忍耐が、秋からの実りにつながりますように。
急ぐことなく守りに立つことも、時には必要な知恵であり、勇気だから。



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神戸のファンタジー その2

青木祐奈選手は、去年もここに来てくれていた。
今年はOn My Ownをメインにした「「レ・ミゼラブル」、曲のドラマをよく表現している。
もう、この子の成長をずっと見守っていきたい気持ちになってしまう。

本田真凛選手、背が高くて身体が大きいのに驚いた。
とても繊細な演技をするので、もっと小柄でほっそりしているのかと思っていた。
可憐さと華やかさに加えて、アスリートらしい力強さ、存在感がある。
最後に跳んだ3F3Tの、セカンドジャンプがダイナミックで素敵。

イリヤ・クーリックさん、長野五輪の王子様。
スケールの大きな演技、豪快なジャンプ、長くスケートを楽しむ心のあり方を伝えてくれる。

ルレさんの幻想、チェスナ夫妻の華麗、ポーリシュク&べセディンのユーモア。
緊張とリラックスとに、一時も退屈することがない。

ブライアン・ジュベールさんの、パリ・テロ事件の犠牲者に掲げる作品。
昨年のボルドーを思い出す。
フランス人としての、彼が演じるレクイエムなのかもしれない。

カッペリーニ&ラノッテ選手。
アイスダンスを観るのは初めてだったけれど、どの瞬間も絵になるような優美さだった。
ユーモラスな演技も楽しませてくれた。

鈴木明子さんの「ブラック・スワン」、宮本賢二さんの振り付け。
音楽の物語の、情感のこもった繊細さと、悲劇的な壮大さとを紡ぎだす、それはもう素晴らしい舞台。
明子さんの瞳が輝いていて、その光の強さに射抜かれそうだった。
何度でも観たくなる傑作だと思った。

そして、漆黒の衣装からからまばゆい白色に一転したカッチーニの「アヴェ・マリア」。
ひとつの公演で妖艶と清純を演じ分けるのは、鍛錬と成熟の証しだと思った。

この時点ではまだ、彼女から婚約の報告はなかったけれど、会場はもうそういう祝福の雰囲気だった。
観客とのアイコンタクトで、彼女は幸せそうに笑っていて、お祝いの気持ちは届いていたと思う。




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「ラ・ヴァルス」…ランビエールのワルツ

ステファン・ランビエールさんがスケートを滑り、福間洸太朗さんがピアノを弾いたラヴェルの「ラ・ヴァルス」。

今でもまだ、ステファン!と繰り返し叫び出したくなる。

胸の中に熱をもった塊が残っていて、そう叫びでもしないと苦しくて息がつまりそうになる。

「ラ・ヴァルス」には「管弦楽のための舞踏詩」という副題が送られている。

舞踏詩とは、なんと豪奢な美しい言葉だろう。

絢爛とした舞踏会のワルツに興じる人々を、渦を巻くような音のうねりがさらっていく。

不協和音の連打がいざなう、悪魔のように圧倒的な踊り。

ひとりのピアニストと、ひとりのスケーターしかいないのに、時間と空間をすべて塗りかえてしまうような、壮麗な世界。

気品と堕落、端正と混沌、優雅と退廃。

音楽はリンクの上で視覚化され、スケートは舞踏を越えてゆく。

その奇跡はいきなり幕を降ろし、演者は二人ともその場に倒れ込む。

不道徳なほどの美しさだった。



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神戸FaOI・羽生選手からのメッセージ

神戸ファンタジーオンアイスでは、羽生選手からのメッセージが流されました。
それを「元気のない声だった」「小さな声だった」と伝え聞いて、心沈んでいるかたもいらっしゃるようですね。
でも、私はそんなふうには受け止めませんでした。

メッセージの内容は、代読されたと聞いている札幌での言葉とあまり変わりはなかったかと思います。
思うように回復できず…とか、早く元気な姿をお見せできるように…とか、そんな内容だったと思います。

まだ回復の途中です。出演できなくてごめんなさい。
そんなメッセージなのだから、静かに語りかけてくれたのだと思います。


その、録音の合間に、羽生選手の息づかいが聞こえていました。

「SEIMEI」の冒頭に自分自身の息の音を吹き込み、作品に生命力を与えようとした、彼の呼吸する音です。

あの録音をしたときと同じように、彼は自分の手にレコーダーを持って、このメッセージを吹き込んだのではと思いました。

彼の言葉とともに、彼の存在が、彼の息づかいがそこに、確かにあるのを感じました。

彼はきっと、真心を込めて、伝えようとしてくれたのだと思います。


そして川畑さんは、彼と共演するはずだった「You Go Your Way」を歌ってくれました。

優しく響いて、力強くて、心地よく通っていく、それはもう素晴らしい歌声でした。

二度とひとつに交差することのない人生、別れていく心をうたう曲。

そんな大人のバラードを演じる羽生選手と、いつか本当に、どこかのリンクで、めぐりあう事ができますように。


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神戸のファンタジー

この世には二種類の人間しかいない。
旅をする人と旅をしない人だ。
もちろん私は、旅をしない種類の人間だ。

スケート靴をスーツケースに詰め込んでは、いつも旅をしている人たち。
自分の音楽を届けるために、聴衆を求めて旅する人たち。
彼らの競演を楽しむために、遠くからこの場所へ集まってきた人たち。

青い氷にレーザー光線の色彩が飛び交う。
響いてくる音楽の高揚、自由に宙を舞い踊る美しい人々。
感覚をゆさぶられ、喝采を惜しまない観客たちもまた、その祭典の共演者。

旅人はどこか遠い異界からやって来て、見知らぬ世界を運んでくる。
おそるおそる覗いたその境界線を、光と音とが消し去ってゆく。
ファンタジーの渦の中へと引きこまれる人々の歓喜。

彼もまたひとりの旅人だから、今もまだ、その旅の途中にいる。
少し疲れて腰を下ろして、長い休息の時を送っている。
だから彼の言葉は吐息にまぎれて、遥かに遠いあこがれのようだった。

この場所の至福は、ずっと彼の帰りを待っている。
私は旅をしない人だったけれど、ここへなら、いつかもう一度訪れてみたい。
私もまた、旅する人のひとりになりたいと思う。



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神戸FaOI 前夜祭

明日は神戸ファンタジーオンアイスの開幕ですね。
オープニングやフィナーレを、デヴィッド・ウィルソンとブライアン・オーサーが振付するという、なんと豪華な企画。
FaOI2016
それはもう贅沢にショーアップされたステージになりそうです。

バトルさんもオーサーコーチも日本にいるのでは、羽生選手の新しいプログラムはどうなるのだろう?と思ってしまうけれど、ハビエル選手も「新プログラムは9月から」と言っていたので大丈夫。
むしろ、今の時期にゆっくり構想を練られる分、余裕を持てると思います。
時間をかけて新しい作品をつくることを楽しんでくれれば、と思います。

そして、シェイリーンはもちろんよかったけれど、そろそろもう一度、ウィルソンさんにお願いしてはどうでしょう。
ソチから2シーズンを経て、さまざまな経験を積み、さらに新しいステージに立つ彼の姿を観たいと思います。
笑顔があふれ歓喜を歌い上げるような作品が観たい。
滑ることが楽しくて、音楽の喜びを身体いっぱいに表現して、生き生きとリンクを躍動する姿。
もしもそんな作品だったら、きっと泣きます。
笑顔を見て泣くっていうのも変だけれど。

…と、羽生選手のお話になってしまいました。

それでは、一年ぶりの神戸を楽しんで来たいと思います。


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