フィギュアスケートLife Vol.6…4回転の未来

羽生選手もハビエル選手も、高度な4回転を跳ぶ事による、ジュニア選手の故障について気にかけてくれています。

羽生選手。
「どんどん技術が進化していくにあたって、身体にあわない技術の進歩が見られてきているのかな」
「山本選手も含めて、やはりちょっと身体に負担が大きいのかなという感じが、なくはない」

ハビエル選手の提言はさらに具体的です。
「どこかの時点で国際スケート連盟が制限を設けるべきだ」
「4回転ジャンプというのは本当に爆発的な力が身体にかかるんです」
「若い選手たちは、まだまだ時間があるのだということを理解していない」

まだ骨の成長途中にあるジュニアの選手たちが、「今」勝ちたいという気持ちの強さのあまりに、将来を考えない。
自分自身の経験から、ハビエル選手は、彼らの挑戦に理解を示しながらも警告しています。
4回転が跳べるようになること、それは若い選手にとって素晴らしくうれしい事だとよくわかるからこそ。
彼らへの思いやり、スケート界全体への愛情を感じます。

そして、さらに大先輩であり、公式戦で初めて4回転を跳んだカート・ブラウニングさんのお話を、青嶋正さんが伝えてくださっています。

「4回転は身体にとって大きなダメージだと理解していた」
「4回転というのはキャパシティがあるイメージ。例えば現役のうちに1000回跳べる、みたいな」

五輪で勝ちたいなら逆算して、ジュニアの時から考えていく必要がある。
今この時に4回転を跳ぶ必要があるのか、と。
とても興味深いお話だと思います。

ジュニアワールドへ出発直前に怪我をした選手。
エキシビションで4回転を跳んで怪我をした選手。
まだ若い彼らの身に起きたことを考えると、将来ある才能を育ててゆく事の重さを痛感します。
次のシーズンから、彼らが元気に復帰してくれますように。



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フィギュアスケートLife Vol.6…パトリック選手とトリプルアクセル

名選手であっても、トリプルアクセルの苦手な選手は少なくないようです。
羽生選手が次々と新しい技に挑戦して来れたのも、盤石で美しいトリプルアクセルがあるからこそ。
ソチでの金銀を分けたのも、パトリック選手が最後に跳んだアクセルだったかもしれません。

パトリック選手のような大選手が、
「安定したトリプルアクセルを跳べるようにならずに引退していたら、僕は自分自身を許すことができなかっただろう」
「3度世界チャンピオンになったけれど、それなしでは真に自分が世界チャンピオンだとは言えなかったと思います」
と、正直に話しています。
パトリック選手にとってほとんど唯一の弱点だったアクセルです。
休養し復帰して、それからなお自分に足りないところを克服し前進しようとする態度。
素晴らしい努力だと思います。

ある時期までは、男子で2Aを入れている選手は珍しくなかったと思います。
でもあっという間に、それでは勝てない時代になりました。

羽生選手は「アイスジュエルズ」で、
「自分自身が彼の構成を変えるぐらいの選手になれたことが嬉しい」と話しています。
いつも目標にしてきたチャン選手の存在を、羽生選手は今でもずっと見つめ追いかけているのだと思います。

宇野昌磨選手についてもチャン選手は、「彼は僕が経験したことをこれから経験するのです」と言ってくれています。
その後宇野選手は、あっという間に4Fを習得していきました。
才能あるスケーターたちがそれぞれの時代を築き、お互いに影響しあいながら歴史を織りなしていく。
世界選手権はそんな素晴らしい連鎖の場でもありました。

そして、パトリック選手の氷を見極める深い眼差し。
時には氷の質について進言してくれるのも、実績のある選手だからこその役割を果たしてくれているのだと思います。

ソチからのパトリック選手の二年間は、本当に長い戦いだったと思います。
迷っていたけれど、平昌まで現役を続けてくれるという。
圧倒的なスケーティングを武器にしてきたチャン選手が、高難度ジャンプ時代の到来に順応しようとしてきた、長い葛藤を思います。

5位に終わったことはがっかりしているけれど、
「会場にエネルギーが満ちていて、自分が生きていることが素晴らしいと感じた」。
そんな幸福感にあふれた演技を、これからも届けてくれますように。


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「フィギュアスケートLife」Vol.6…羽生選手とハビエル選手

「フィギュアスケートLife」Vol.6をとても面白く読んでいます。
まるでスケーター百科事典のように、ひとりでも多くの選手を紹介し、その選手のよさを伝えようとする、熱意に溢れた構成。
すべての選手へのリスペクトが感じられ、ページを開くたびにその魅力にうっとりしてしまうような一冊です。
その内容の濃さに、一ページごとに一つの感想記事を書いてもまだ足りないような気さえします。

羽生選手へのインタビューも、彼の言葉がすっと届くように感じます。
ワールドからひと月半を過ぎて、まだ痛みのある中で当時を振り返る羽生選手の言葉の静かさには、胸を打つ響きがありました。
日々乱高下する体調の波をかいくぐるようにして、足の痛みと腫れをおさえながら試合に出た。
その葛藤をあがなうかのように、自分の表現を追求しスケーティングを楽しみ、清々しく演じきることができたエキシビション。

「交感神経が高ぶりすぎて、その副作用でフリーを失敗した」というのも、羽生選手らしい感覚だなとうなずけました。
あまりに細かく分析して、メソッドとして説明しようとすると、かえって迷路に入り込んでしまうかもしれない。
羽生選手は確かに、自分を客観視して考える論理的なスケーターかもしれないけれど、その個性的な感覚を、身体でも言葉でも直感として表現していく人でもあると思います。


ところがこの本について、amazonのレビューなどで批判が展開されているのを知りました。
それは主に、ハビエル選手の記事のこの部分についてのようです。
一部引用させていただきます。

「ああいうことは、(ホームリンクで)練習しているときでも、時々あることです。誰もが誰かの邪魔になるような場所にいる、ということがあるものだからね。僕は2人どちらの立場もわかります」
「ユヅルは「僕がすごいところを皆に見せてやる」みたいに思っていたけどできずにイライラしたと思います」
「デニスの方はちょうどスピンをやっていたから、ユヅルが見えなかったんじゃないかな。スピンをしている最中にどうにかしようと思っても、実際のところ何もできないものだし」

これを読んで、ファイナルの時、バルセロナの観客のハビエル選手への大歓声を聞いて、「見てろよ!」とダッシュして「俺だぞ!今から俺が滑るんだぞ!」と3Aを跳んだ、と言った羽生選手を思い出しました。
そんなふうにしてモチベーションを上げ、闘争心を燃やしていった羽生選手の姿を。

この件をまた蒸し返すのか、という声もあるようです。
でも、ワールドのあと出版された雑誌の多くが、この件について書いていたと思います。
なかには、羽生選手がプレスカンファレンスで、精神状態がぐちゃぐちゃだったと言ったのを、テン選手の件が原因で、という内容の注釈をつけた雑誌もありました。

私には、ライフのハビエル選手はむしろ、「だから、この件はもう蒸し返さなくていいんだよ」と言っているように読み取れました。
自分もまたひとりの選手として、羽生選手もテン選手も、両方の立場を理解して、握手したことを尊重してくれていると感じました。

気質の違う二人だからこそ、切磋琢磨しながら、あるいは同時にリンクにいなくてもお互いを意識しながら、尊敬しあって伸びてきました。
だからこそ羽生選手は、自分がクリケットにいない間にハビエル選手が構成を上げたことに、何かしらの感情を抱いたのだと思います。

サルコウをマスターしたいという羽生選手を快く受け入れ、仲間としてくれたハビエル選手。
お互いを鏡に映しあうような対照的な二人。
そうして世界のトップを争う二人を指導することに、コーチとしての誇りを持っているオーサーさん。
羽生選手の怪我がよくなり、また、クリケットのリンクでのそんな日々が戻ってくることを、待っていたいと思います。



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アイスジュエルズvol.3 …積極的な休養

雑誌「Ice Jewels」vol.3を読んでみました。
フィギュアスケートの雑誌はたくさん出ているけれど、手にとってみて、買ってみようかと思う本はそんなに多くありません。
でもこれは、やはり読んでよかった、と思える一冊でした。

まず何より、落ち着いて読めた事。
感傷的だったりセンセーショナルだったりして、もしかしたら泣きながら書いているのではないかと想像させるような姿勢の本もありますが、この本にはそんな雰囲気はありません。

最初の羽生選手へのインタビューは、いつの時点のものかははっきりしませんが、冷静な書き起こしに、こちらも静かな気持ちであの頃を振り返る事ができました。
逆に言うと、まだ混乱している状況のボストンで収録した、20分ものインタビューを肉声のままノーカットで放送することが、本人のためになるのかどうか。
本人がカメラに向かって話したこと、それがバイアスのかからない素の姿だから信頼できる、という意見もあるかとは思いますが、それは時と場合によるのではないかなと思います。

…1月から足の痛みが改善せず、全日本のあと四大陸を辞退しても治すことができなかった。
メンテナンスをしっかりできず、痛みを取ることに対処できなかった。
ボストンでは、練習と休息のリズムを取り、2日練習、1日休んで3日練習、というスケジュールでめりはりをつけた。
初日の練習ではたいへん調子が良かった。…

その、インターバルを置く練習方法を、痛みのために不本意ながら休みを取ったかのように読み取れる記事を、他の雑誌で読んだ気がします。
積極的に、計画的に取った休養なのか、焦る心を封じ込めながら仕方なく練習をあきらめたのかは、まったく意味が違う話です。
実際の事はわかりませんが、少なくとも羽生選手は、積極的に建設的に休養を取り、陸上でのトレーニングを入れながら調整していくメソッドを理解していたのだと思います。

もちろん、それでは対処できないほどの大きな負傷だったので、それもやめて、早期のうちに時間をかけて固定し安静を保つのがベストだったのだと思います。
痛みの原因を取り除く事、つまり今の高難度で、4Tのトウを突いても足を痛めない方法は、まだ開発されていないのだから。


「あの氷でできるスケーティングが最終日に見つかったんです。
だから、エキシビションは良かったでしょ」
という問いかけには、はい、とてもよかったです!
と思わずうなずいてしまいました。


そのほか、オーサーコーチやハビエル選手へのインタビューも興味深かったので、また少しずつ書ければと思っています。
感想をひと言で言えば、羽生選手がトロント・クリケットクラブというホームを得た事は、やはり天の配剤だったと思う、という事です。


FaOIの札幌公演では、羽生選手からのメッセージが読み上げられたそうですね。
療養に専念し完治され、身も心も軽やかになって、またリンクに舞う姿を楽しみに待ちたいと思います。

日曜日には幕張公演のテレビ放送もありますね。
そちらについてもいずれまた。


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「アイスジュエルズ」vol.2

雑誌「Ice Jewels」vol.2を読んでみました。



今、あまりにもたくさんの雑誌が発売されるので、
すべてチェックすることなどとてもできません。
でも、この本は、紙質も色彩もきれいだし、
選手の写真も素敵な瞬間が選んであって、
選手を大切にしようという姿勢が現れていて、
ページを開くたびに幸せな気持ちになれます。
2冊目もまた、読み応えのある一冊でした。

それぞれの大会についての記録が詳しくて、データも載せられています。
ルールについての吉岡伸彦さんの解説はマニアックなほどです。
どうしたら0点がついてしまうのか、の説明を読んでいると、
競技としてのフィギュアスケートが、こんなに緻密なルールに乗っ取ったスポーツなのだと、
あらためて、選手のみなさんに頭が下がります。

羽生選手が「バラード第一番」について話しているのも、とても興味深く読みました。
あのピアノ演奏者を「ツィマーマンさん」と言っているのを初めて聞きました。
「ツィマーマンさんって意外に若いんですよ」とか(^^)
このお話についてはまた、ゆっくりと書いてみたいと思います。

それから、私にとっては胸に迫るというか、読んでよかった…と思う記事もありました。
それについても、またいつか。



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