スクリャービン・エチュード 「悲愴」

「悲愴」はとても美しい作品だけれど、どう捉えていいかわからなくて、
その前に立ちすくむような思いがし、なかなか書くことができませんでした。



壁のように迫ってくる黒い海のおそろしさを封じ込め、
蒼く透きとおりきらめく波のように演じる事は、
16歳には大きすぎる課題だったのかもしれません。
象徴的で壮大な音楽は、とまどう彼を拒むかのようです。

けれども、全霊を捧げ身を投げ出すようにして、彼は演じ続けます。
やわらかく深く大きな表現で、伸びあがり、沈み込み、
流れを感じ、風を感じ、指の一本まで張りつめて訴えようとします。
怒涛そのもののようなステップは、その恐れを越えていくような強さで迫ってきます。
何度も繰り返してこの作品を演じ、祈りを込め、
多くの人に届けようとした彼の真摯を思います。

千の言葉をつくしても伝えられないもの、
観る人それぞれのイメージを引き出していく力。
ひとそれぞれの記憶に触れ、姿のない琴線をそっと鳴らす。
それは倍音のように共鳴し、無限の深さにまで広がり響いていきます。


そして、幻想的でロシア的な悲痛に満ちたこの音楽の難しさに挑むことは、
競技者としての彼を奮い立たせもします。
ジャンプの失敗があってもリカバリしていく聡明さを見せるとともに、
なかなか完璧には演じきれない悔しさも、彼の闘争心を刺激し、
やがて、ニースのロミオを導き出します。


あの時、たくさんの子供たちが被災し、心痛め、涙しながらも歩み出しました。
彼もその一人として、悩みまどいながらも、
スケートに生き競技に賭ける人生をさがし続け、ここまで来てくれました。
どんな状況にあっても、美しいものへの憧れは、
人を支えてくれるのではないかと思います。


彼がスケートを選びぬいてくれたことに心から感謝したいと思うし、
彼を支えてくれたたくさんの方がたにも、お礼の気持ちでいっぱいです。
特に、今は静かに彼を見守ってくださっている阿部奈々美先生の深い愛情に、
尊敬をもって、ありがとうございますと伝えたいと思います。




スポンサーサイト



テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

100分de名著 アドラー「人生の意味の心理学」~2

NHK・Eテレの「100分de名著」で取り上げられた、
アドラー「人生の意味の心理学」の後半についてです。

アドラーは、人間のすべての悩みは対人関係の悩みであると言っている。
人間は、自分自身の人生を描く画家である。
承認欲求が強すぎるあまりに、他者の期待を満たすために生きてしまったら、
本当の自分ではなく、他の誰かの人生を生きることになってしまう。
自分の課題と他者の課題とを分離し、他者の課題に踏み込み過ぎてはならない。
自分の行為の価値は自分で決め、その結末を自分自身で引き受けるのが人生である。
それは、幸せになるための勇気である。
対人関係は悩み深いものだが、生きる事の幸福もまた、人と人との関係にある。

それでは、幸福になる方法とはどんなことだろう。
アドラーはそれを「共同体感覚」と呼んでいる。
他者を仲間とみなし、そこに自分の居場所が見つかれば、
仲間たちのために貢献しようと思える。
その共同体とは、家族にはじまり、広くは社会、人類、宇宙の全体にまで及んでいる。
人生の意味は全体への貢献である。
人は全体の一部であり、全体とともに生きている。

自分で自分の課題のために行動し、自由に生きるようとすることは、
もしかしたら他者に受け入れられないかもしれない。
その時は、嫌われる勇気を持って、もっと大きな共同体への貢献を探ればよい。
人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ。

自分を受け入れ、短所を長所に置き換え、長所を生かして他者に貢献する。
他者を仲間だと信頼し、誰かの役に立っているという貢献感が、人間の幸福である。
自己への執着を他者への関心に切り替え、自己と他者を常に勇気づけていく。

その勇気づけのためのキーワードが「ありがとう」である。



アドラーの本を読み、その言葉を聞いていると、
いつも、羽生選手のことを思い出します。




さて、「100分de名著」の次回からは、磯田道史先生が登場されています。
これもひとつのシンクロニシティと言うべきでしょうか。
…あ、それは、ユング心理学のほうでしたね!

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

100分de名著 アドラー「人生の意味の心理学」~1

NHK・Eテレの「100分de名著」で、アドラーの心理学を取り上げていました。

アドラーは子供の頃、病気のために思うように動くことができなかった。
それは、彼が医師となることの動機でもあった。
ウィーンで、プラーター遊園地の近くに開業した。
そこで、空中ブランコ乗りや軽業師を診察するうち、彼らの多くが、幼い頃に病弱だった事に気がついた。
彼らは、身体の弱さを努力によって克服し、逆に活かして強みに変えていたのだった。

このエピソードに、子供の頃から身体が弱かった羽生選手の事を思いました。
心肺機能が弱くスタミナがないと言われていた彼が、長いあいだ努力をかさねながら成長してきたことを。
はるか遠い目標へと歩み続けることで、克服する以上の大きな夢をかなえてきたことを。


「自分自身を好きになれない」と、劣等感に悩む人は多い。
けれども劣等感は、人生へと立ち向かう力を生み出すことができる。

その「劣等感」とは、他の人と比べて自分が劣っていると思うことではない。
他の誰か、ライバルと競争して勝つこと、他者との関係を言うのではない。

自分自身の理想と目標に対して、今現在の自分が届いていないと感じることである。
そのような劣等感は、勇気を持って今の自分を前へと歩ませ、努力によって課題を乗り越えていく原動力となる。
理想の自分を追い求める事、「優越性の追求」は、劣等感と裏腹である。


羽生選手は決して、自分の体調のことを言いつのったりはしません。
黙って、自分の力で向き合い、乗り越えてきました。

もし、勝つことだけが目標なら、ソチのオリンピックで彼は最高に満足だったはず。
けれどもそうではなく、その勝利から彼はまた次の目標を見い出しました。

そして今もまた、自分が理想とするスケートへ向けて、努力を重ねています。
記録も記憶も、技術も芸術も、あらゆる面での完璧を求めています。
330点もまた、彼に次の理想を与えるでしょう。

「すべての人を動機づけ、我々が我々の文化へなす、あらゆる貢献の源泉は、優越性の追求である」



NHK「100分de名著」アドラー「人生の意味の心理学」

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

水墨画風味柚子

水墨画風味柚子1

水墨画風味柚子2

pupuさまが水彩画を描いてくださいました。

キッチンで、煮込み料理の仕上がりを待つ間に描いたって、本当ですか?!

私の技術力では、墨色の濃淡や筆のタッチが画像にうまく再現できなくて、ごめんなさい。

でも、氷に踏み込むブレードが、ちゃんと銀色に光って見えるから不思議です。

どちらも、手のひらを力強く、指の先まで広げていて、

それは受け止めようとしているのか、それとも解き放とうとしているのか、

その手のひらにあるのはいったい何なのだろう、そんな事を考え込んでしまいました。




pupuさま、ありがとうございました。

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

誰にも聞こえなくても

誰にも教えられなくても、「よろしくお願いします」って、御挨拶したり。

誰にも聞こえなくても、「みなさんのおかげです、ありがとうございました!」って感謝したり。

2015 ファイナル 1

「パリの散歩道」をパーフェクトに演技した後で、「緊張した~!」って。

WTT 2015 EX1

でもそのあと、また、力強くうなずいて集中し、「バラード1番」のステップをみせてくれたのですよね。

表彰式の後もリンクに残って、製氷スタッフを手伝っていたり。

国旗を床に置くことはできないと、手渡して預かってもらったり。

後輩を励まして、エキシビションの花道に送り出したり。

いつどんな時でも、誰にも見えず聞こえないところでも、誠実をつくしてくれる羽生選手。

そんな彼を応援できることに心から幸せを感じます。

聞こえなくても、届いている。

本当にありがとう!

あなたの幸せを、願いがかなう事を、祈っています。




本日放送の「キリトルTV」より記事にしました。
画像は動画よりお借りしました。ありがとうございます。

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

プロフィール

yuzurufight

Author:yuzurufight
読んでくださってありがとうございました

あたらしい記事
あたらしいコメント
カテゴリ
月別アーカイブ
タグリスト

羽生結弦 世界選手権 SEIMEI バラード1番 オペラ座の怪人 NHK杯 ファンタジーオンアイス ファイナル 宇野昌磨 天と地のレクイエム オーサーコーチ 国別対抗戦 パトリックチャン 全日本 宮本賢二 野村萬斎 高橋大輔 フェルナンデス ソチオリンピック 浅田真央 織田信成 FaOI 町田樹 オータムクラシック 小塚崇彦 KENJIの部屋 全日本選手権 プルシェンコ 無良崇人 能登直 宮原知子 中国杯 スケートカナダ 陰陽師 デニス・テン 佐野稔 パトリック・チャン ナム・ニューエン 本田武史 村上大介 FaOI 24時間テレビ チーム・ブライアン ハビエルフェルナンデス ファントム アイスジュエルズ 鈴木明子 Number 四大陸選手権 パリの散歩道 ボーヤン・ジン クリケットクラブ あさイチ ビリーヴ DOI オリンピック 平昌オリンピック 都築章一郎 ガーナ 山本草太 阿部奈々美 ボーヤンジン クリアファイル 安倍晴明 フィギュアスケートTV スポーツ酒場語り亭 安藤美姫 盛岡エキシビション ジェフリー・バトル 野口美恵 手術 NHK杯 ショパン ジョニー・ウィアー 本郷理華 八木沼純子 シェイ=リーン・ボーン 荒川静香 花になれ ロッテガーナ 衣装 NHK バスクリン ブライアン・オーサー シェネル 中日賞 ロッテ DOI 樋口新葉 村上佳菜子 スケートアメリカ デニステン 磯田道史 パパダキス フィギペディア アドラー ロミオとジュリエット 4回転 ロミオ+ジュリエット 四大陸 松岡修造 世阿弥 短歌 ロシア杯 村主章枝 トリプルアクセル フランス杯 仙台 世界ジュニア 花は咲く アオーレ長岡 トロント 俳句 闘争本能 ANA COC カナダ杯 ハビエル・フェルナンデス TCC 羽生結弦語録 リスフラン靭帯 ヤグディン 悲愴 樋口豊 カナダ選手権 欧州選手権 紅白 情熱大陸 スケーティング スターズオンアイス はたちの献血 ザヤックルール ナムニューエン アディアン アイスリンク仙台 岡崎真 ジャパンオープン きき湯 トゥクタミシェワ グレイシー・ゴールド ランビエール キシリトールホワイト 井上怜奈 G2 ジュベール イーグル 劇団四季 宇都宮直子 殿、利息でござる! 本田真凛 ジョニーウィアー フィギュアスケートLife 華原朋美 コーラスライン ティモシー・ゲーブル 川畑要 ラトデニ 4Lo 白岩優奈 ツィメルマン フロー ライフ ウィルソン フィギュアスケートライフ グランプリファイナル 献血キャンペーン 本田真凜 福間洸太朗 家庭画報 ジェフリーバトル 報道ステーション ブライアンオーサー Believe 献血 青嶋正 茂木健一郎 AERA 西野友毬 朝日スポーツ大賞 無私の日本人 題名のない音楽会 バレンタイン 長洲未来 清塚信也 シェイリーン 太田由希奈 ニューイヤーオンアイス ファイナルタイムトラベラー ネイサンチェン ケヴィンレイノルズ ゾーン 

あたらしいアイテム
検索はこちらから
QRコード
QR