チーム・ブライアンのオリンピック

ブライアン・オーサーコーチの著書「チーム・ブライアン」には、ソチ・オリンピックでの戦いの過酷さが書かれています。
過密な日程をこなさなければならないとわかっているなかで、ピーキングを造ろうとしても、それはとても難しい事。
優勝してもなお悔いている愛弟子に、オーサーコーチの暖かいまなざしが注がれています。

団体戦を闘い、応援にも参加して、蓄積されていく疲労。
ショートプログラムから続く過密なスケジュール、睡眠不足。
深夜に及ぶ滑走順抽選会や、記者会見。
他の競技も同じリンクで行われ、日程がかぶさっていて、氷の状態もよくない。
オリンピックは4年に一度しかない、夢の舞台のはずなのに、そこには魔物が棲むという。

演技の直後には、銀メダルだなと思ったというオーサーコーチの、彼を励ます静かな表情。
得点を見てつっぷしてしまう羽生選手。
しかし、その直後、チャン選手もミスを重ねてしまう。

羽生選手はむしろミスの少ないほうだった。
ソチ入りしてからは「世界最強オーラ」を放っていて、多少ミスしても演技全体には響かない勢いがあった。
チャン選手はピーキングに失敗し、ミスしそうな雰囲気でミスをした。
気持ちが演技に出て、勝敗を分けた。

羽生選手の強い気持ち、時にはがむしゃらに頑張りすぎてしまう気持ちをコントロールしていき勝利を呼び寄せる。
公式練習の時も、あえて特別なアドバイスはせず、いつも通りの平常心を保たせようとする。
二度のオリンピックに出場し、銀メダルを得たオーサーコーチだからこそ、羽生選手の心の動きが、実感を持ってよくわかるのだと思います。

記者会見や、表彰式といったセレモニーも、世界中の人々が注目する中で、立派に務め上げました。
安倍首相からの祝福の電話で喘息の事を聞かれ、「試合の後にちょっと発作みたいなものはあったんですが」と答えた彼。
体力も気力も、限界までを使い果たし、絞りつくしていたのでしょう。

2012年、オリンピック前年のファイナルで、ソチでの試合に臨んだとき、オーサーコーチに、
「ソチオリンピックのチャンピオンになりたい、その次の韓国でもチャンピオンになりたい」と言ったという羽生選手。
大きな、大きな二つの夢、その夢の一つは見事にかなえられました。
でもそれは、彼に重たい課題を残してもいきました。
そして、そこに試練があればあるほどに、必ず挑み、さらに高く超えていくのが彼、なのですね。

ソチ 金メダル


いまにして、わかるのです。
あの時、彼のつよさも、よわさも、はげしさも、はかなさも、かしこさも、かわいさも、すべてがあらわされ、オリンピックという舞台に、凝縮されていたのだと。
なにひとつ隠すことも、飾ることもできない、浄化されたあとに、無垢なたましいだけが残った姿だったのだ、と。



*最後の数行は、昨日みなさまのコメントを読ませていただいて、書き加えました。
*コメントを寄せてくださったみなさまに感謝をいたします。

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ロミオとジュリエット 

ソチ・オリンピックの、男子シングルフリープログラム、その長い長い夜。
「ロミオとジュリエット」の演技直前、羽生選手は微笑んで「楽しんでいこう!」と自分に言い聞かせていたのですね。

ソチ ロミオ

オリンピックの金メダル、それは、歴史にその名を刻むという事。
パトリック・チャン選手との差は3.93点。
勝つか、負けるかの一騎打ちに、19歳の若さでたったひとり挑んでいった。
4年間にただ一度しかない、空前絶後の、4分30秒。
一瞬一瞬に 全身全霊を捧げる彼。

その演技を語り尽くせるほどに、尊い、聖らかな、そんな言葉を、私は一語も知らないのです。

あの寒い夜、あなたを讃え夢中で拍手を送った感動を、昨日の事のように思い出します。

ソチ 表彰

「世界の頂点に立ったという実感はありますか」と聞かれて
「あんまりないですね。ただ、全力でやりきったっていう思いはあります」と、きりりと答える。
「ショートはうまくやれたっていうのは、すごい自信にはなりました」

ソチ 金メダル 2 - snapshot

あんな激闘を終えたばかりなのに、もうすでに、闘う人の表情になっています。
「早くサルコウの練習がしたいですね」


そう、アスリートとして最高の栄誉を得てからも、この一年、あなたはずっとそうあり続けています。
そしてきっと、今日も、そうしているのですね。
2015年・世界選手権。
大きな舞台が、またあなたの登場を待っています。

ソチ 金メダル


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パリの散歩道

ソチ 個人

ソチ・オリンピックの団体戦から6日後が個人戦。
でもその間に他の選手の団体戦の応援もあった。
プルシェンコは棄権していった。
そんな状況だったので、試合前には、せっかく団体戦で出した好成績をそのままシフトしてもらえないものか、と思ってしまった。
それなのに、一週間前の自分を軽々と越えて見せるとは、もう本当に信じられない。

この「パリの散歩道」は、「チーム・ブライアン」によると、羽生選手に足りなかった所をもプラスに変えてしまう作品。
羽生選手は、疲れてくると背筋が伸びなくなり猫背になってしまう。
スケーティングスキルもまだ磨きぬかれてはおらず、ワイルドだ。
カナダに来てからオリンピックまでに、彼のスケーティングを見直しきるには時間がたりない。
そこで、けだるいブルース・ロックを合わせる事で、渋い雰囲気を醸し出し、ワイルドさを魅力に転化させてしまう。
その戦略は見事に成功し、二年間を通したこのプログラムは高い評価を得た。

そしてもちろん、たたみ掛けるように配された超絶なジャンプたち。
スコアを見るとあの有名な「カウンターからのトリプルアクセル」の得点は後半+GOEで11.49。
4回転トウループはGOE2.86という当時としては最高の評価で13.16。
3回転ルッツと3回転トウループのコンビネーションで12.61。
あの大舞台で、まったくミスのない、完璧以上に完璧な演技で、合計点は101.45の世界記録です。

ソチ ショート

一方のパトリック・チャン選手は、最初の4回転トウループと3回転トウループのコンビネーションで16.4点を出したけれど、その後は得点を伸ばせない。
演技点では羽生選手より0.57点上回ったのみ、二人の合計点差は3.93点でしかない。
「チーム・ブライアン」でオーサーコーチが言う、チャン選手の「ピーキングの失敗」。
それは福岡のファイナルの後、自信と勢いを失い不安に陥っていたから。


でももちろん、本当の戦いはまだ、これからだったのですね。


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あの蒼穹の舞台で

ソチ 団体

ソチ・オリンピック、フィギュアスケート競技で初めて行われた団体戦。
当初は、選手にとって負担になる、などと危惧されていたのに。
始まってみると、そんなことなど脇に置いて、思い切り楽しんでしまっていました。

各国の選手たちが、それぞれの国旗を持って応援しあう盛り上がり感。
いつものキス&クライではなくて、チームジャパンが一体となってスコアを待つ時のどきどき感。
浅田真央選手と一緒の席のオーサーコーチ。時の流れを感じました。

羽生選手は、「ロシア!」コールが「ユズル!」に聞こえるナイスな勘違いとか、鈴木明子さんにアドバイスしたとか、さすが、初出場なのに緊張さえも楽しんでしまうという大物ぶりでした。

ですがやはり団体戦がある事は、ピーキングの面からいっても、勝負の難しさを増してしまうのですね。
見ているほうにはものすごく楽しい応援風景も、長時間の拘束を受ける選手にとっては大きな負担。
団体選から個人戦へと、成績を落とした選手、怪我をした選手、そのつらい光景が思い出されます。

そんな中で羽生選手は、団体戦で出したショートの点数を、個人戦でさらに伸ばして見せました。
団体戦がある事の唯一の利点は、個人戦に向けての経験になること。
オーサーコーチの戦略通り、それを見事にやってのけました。

何度も言ってしまうけど、あれからもう一年。
本当によくがんばった、素晴らしかったなあと、しみじみとしてしまいます。
今は極北へと旅立ったあの人も、蒼穹の舞台の記憶を、蘇らせているのでしょうか。



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なんと、いい笑顔だ

ソチ 金メダル

ソチ・オリンピックからもう一年がたつのですね。
羽生選手のこの晴れの姿を、今こうして思い返すと、やはり、この出来事が彼の人生を決定的に変えたのだな、と思います。
羽生選手本人は過去の栄光と言っているようですが、でもそれは必ず、未来へと繋がる栄光であるはず。


それは、ある素敵な紳士が書かれているサイトのお話です。
その方は、まだ思春期にあった息子さんをなくされており、静かな鎮魂の思いをそこに綴っておられました。
その上で、趣味の深さを感じさせる記事を載せておられ、普段はスポーツの話題など出てこないページなのです。
羽生選手がソチ・オリンピックの表彰台で見せた、この素晴らしい表情を讃えて、その方は「ああなんと、いい笑顔だ!」と、ただ一言だけを書き込まれていました。

何の飾り気もない、ひとりの少年の、喜びと誇らしさとに満ちたこの笑顔。
若々しさと力にあふれ、生き生きとした、アスリートの勝利の顔。

その方が、羽生選手に、なくされた息子さんの姿を重ねられたであろうことを思いました。
追いかけてもかなう事のなかった、息子さんの夢。
夢をかなえて輝く、羽生選手の笑顔。

あれから一年、羽生選手は、さらなる夢を追いかけ続け、何度も苦難に出会い、また乗り越えていこうとしています。
きっとあの紳士も、彼の歩んだこの一年を、見守り続けておられたことでしょう。
彼がまた、新たな栄光をつかんで、あの紳士にも再び、大きな感動を届けてくれることを願っています。



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配慮して事実関係をやや改変しています

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