ガラパゴス携帯

ガラパゴス携帯とはよく言ったもので、いまだに、二つ折りにするその古い機種を使っている。
淘汰されることなく、進化の潮流にもびくともせず生き残った、ガラパゴス諸島のイグアナを、手に取るたびに思い浮かべては、ちょっと楽しくなってみたりもする。
ぱたんと音をたてて開け閉めするときには、こっそりと魔法のコンパクトを持っているようでひそかにうれしい。
なぜって私の待ち受け画面には、羽生選手の笑顔があるから。

フィニッシュNHK 1

今日はちょっといろんなことがあって私としては大変な一日だった。
急ぎの連絡を取るたびに、天に向って光り輝いている彼が何度も私を励ましてくれた。
彼の瞳は未来を見据えていた。

あのとき、二度とふたたびはない一期一会を彼は生き抜いたのでもあり、それはそのまま永遠となって、どこか遠い場所に封じ込められているようでもあった。
晴明の霊力は彼を護ってくれたのか、それともひとときの幻惑に彼を取り残して行ってしまったのだろうか。
喜びの涙と苦い涙を、すべて受け入れ分かち合ってくれただろうか。

時代の先端の強い風を一身に受けながら、再び歩み出そうとする彼のあしたに、幸いあれと祈り続けよう。

世界選手権からあっという間に、シーズン最後の試合が開幕しようとしている。
時の流れに置いて行かれそうな私は、いつこの画面を変えたらいいのかと、まだ少し迷っている。



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開幕直前スペシャル・そして今夜から

フジテレビ「フィギュア新時代へ!羽生の流儀とアメリカの夢
世界選手権2016開幕直前スペシャル」
…全国放送ではないと聞いていたのに、こんな地方でもオンタイムで放送してもらえるとは。

NHK杯のあとで長く話しすぎてしまったカンファレンス。
オリンピックの歴史からひも解いたら、それは、長くなってしまうだろうと思います。

ボーヤン・ジン選手なら、4回転の種類はこのままでOKだと言うでしょう。
なぜなら彼のテクニカルスコアはすでに十分に高く、この先の課題は、
PCSをどう上げていくかと、GOEの加算をめざして洗練させていく事だからです。

でも、羽生選手はそうではない。
ジャンプへの加点も、他のエレメンツの完成度も、PCSの評価も、
ほとんど最高に近いところにまで登りつめている。
4Sを4Loに変えるのはとても高いリスクなのに、
それで得られるのは2点ほどの追加でしかない。
だからさらに高いクオリティを出して行かねばならない。

「いろんな未来が描けるんですよね。
いろんな可能性があるから、人それぞれ」

彼の辞書には現状維持などという言葉はないので、
いつも課題を見つけ、クリアし、向上し続けていくために、
これからどんな方向性があるのかを、
絶えず探って選択し、決定していくのだろうと思います。

「プライドを持って、自信を持って誇りを持って、
やっていけたらいいなと思います」

去年は本当にいい人で、勝ってしまって申し訳なさそうだったハビエル選手も、
今年は、手に入れた王座を明け渡す気は決してないのでしょう。
そして、羽生選手を目標にしながらも、
自分の美点を自覚して静かに闘志をあたためている宇野選手。

本当に、世界選手権と呼ぶにふさわしい競技会。
この週末が次のオリンピックを占う分水嶺となりそうな予感がします。


一転して、アメリカフィギュア界が大きな悲劇から立ち直っていく歴史が語られます。

テン選手がフランス杯の時、
「世界選手権は過去15回中止されている」とツィートしていたのを思い出しました。
第一次世界大戦で7回、第二次世界対戦で7回。
サベナ航空548便墜落事故により、1回。

フランク・キャロル、そしてクリスティ・クラールコーチが、
その大事故の時代の真っただ中にいたのだとは。
その悲劇を越えた不屈の精神をもって、
フィギュア大国・アメリカで選手として大成していくための競争の厳しさ、
その一方にある華やかなエンターティメント性の魅力。


今夜にはもう男子の練習が始まります。
どうか無事に、この素晴らしい選手たちのために、
美しい氷が用意され、守られ、最高の舞台が繰り広げられますように。
それを応援する幸せを、分かち合うことができますように。




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ゾーンに入る

スケートカナダのFSの直前、パトリック・チャン選手はとても動揺していまいした。
けれども、演技を始めると集中し、素晴らしいショパンをみせてくれました。
その体験を彼はこう話しています。
「氷に出て行く瞬間、まるでトンネルの中に入っていくように、周りの事はまったく気にならなくなった」
「自分だけの世界に浸った。心から平和な気持ちになれた」

そして、四大陸選手権ではそれ以上に、完璧で感動的な、
彼の最高のパフォーマンスをみせてくれました。
まさに「ゾーンに入っていた」のだと思います。

羽生選手のファイナルでの演技も、オーサーコーチやトレーシーさんが「ゾーンに入っていた」と言っています。

この「ゾーンに入る」とは、「フロー状態」とも言われています。
それを説明しているのがこちらの、心理学者・チクセントミハイのスピーチです。
英語ですが日本語の字幕もあります。

チクセントミハイ:フローについて

ここにはフィギュアスケート選手の体験が紹介されています。
何も考えることなく演技し、音楽を聞いているのかどうかわからないほど音楽と一体となる。
それは、羽生選手が目指してきた事、
特に「バラード第一番」を演じながら到達してきた事でもあります。

羽生選手はサルコウが成功するようになったことについて話しています。
「跳ばなきゃ跳ばなきゃと思ってやっている感じが、オータムクラシック、
NHK杯、グランプリファイナルとだんだん薄れてきているんです。
これは物理的なものではなく、もう精神的なものです」

何度もランスルーを繰り返し、呼吸数さえ一定になるところまで技術を高めることで、
彼はフローを発見したのかもしれません。

最高のパフォーマンスが行われている時、それ自体が喜びとなって時間を忘れてしまいます。
自分の能力と課題の難易度が釣り合い、「できる」と確信する時、リラックスした幸福な状態で集中することができます。
はっきりとした目標に向かって、心は落ち着き、不安はなく、限界は遠くなって行きます。

それが自分にとって簡単すぎても、難しすぎても、没頭しきる事はできません。
だからフローは長い努力の向こうにあります。
アスリートは常に今の自分を向上させようとします。
うまく行かない事を訓練し、努力しているときはみっともないけれど、
それが成長の階段を上っているという事です。
何度も何度も転びながら、決してあきらめることなく、
高度な技術を自分のものとしてきた羽生選手のように。

長い鍛錬の先に、努力が辛くなく、喜びとなる時が訪れる。
それは、特別な人だけに起こる事ではなく、
だれもが感じることのできる幸福の体験です。
自分が本当に望むことを行っている時には、
フローへの扉がそこに存在しています。




M.チクセントミハイ著「フロー体験入門~楽しみと創造の心理学」
その他を参考にさせていただきました。

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自分自身の「バラード第一番」~2

「バラード第一番」を弾くツィマーマンさんの映像を見て、
「どんな感情でどんな体勢で弾いているのか」までを研究したとは、本当に驚きでした。

その演奏は端正で、抑制が効いているように思います。
もっと奔放に、激情がなだれうつように、緩急を揺らすピアニストもいますね。
ツィマーマンさんを選んだのはバトルさんなのだろうと思いますけれど、
ピアニストの演奏に向き合った上で、自分のスケートがそれを超えるまで、
のぼりつめようとしていたのでしょうか。

「今は、一つひとつの音を踏みしめているような感覚です」

そして、プログラム構成を組み替えたことについて。
サルコウのあとで、
「速い音のところで以前はスピンが2つだったけれど、
そこをトゥループにしたことによって、また違ったダイナミックさが出て、
その速い音でゆっくりとした動きがだせるようになりました」

…この言葉が聞きたかった、と思いました。
サルコウからトゥループに向かう間、曲は次第に速度を増し強くなっていくのに、
リンクを周回しそれから斜めに横切って、ステップを踏み、ジャンプに入ります。
これを、「速い音でゆっくりとした動きを出す」と捉えて、
複雑なトランジションとしてだけではなく、
音楽を大きな連なりとして、きこえない音が流れている事までを、
ダイナミックに表現しようとしたのかもしれない。

その結果、4T+3Tは、音楽のフレーズの山をふたつとも、
そのままなぞって、音を目で見せてくれるようなジャンプとなり、
キャメルスピンに入るのに、ピアノの強打をそのトウで鳴らし、
ドーナツの円形を描いて回転しながら、
繊細なピアニシモが流れ出るのが目に見えるようになったのかもしれない。


そんな事を想像しました。



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自分自身の「バラード第一番」

「Ice Jewels」vol.2に、2シーズン目の「バラード第一番」を、
ジェフリー・バトルさんと一緒にブラッシュアップした頃のことが話されています。

「自分には何ができるか、何が一番曲と合うのかを考えていた」

イーグル+4S+イーグルは、バトルさんからも絶対無理だと言われた。
でも、イーグルからのアクセルは曲に合っていたので、
ジャンプの難易度を上げながらも、その印象を大切にしたかった。

「ジェフなりの曲の解釈に僕が飲み込まれているところもあり、
昨季は僕がジェフのレベルに追い付いていなかった」
「1年間、曲を聞き込んで、少しはジェフに追いつけるようになったかな」
「アレンジに自分の気持ちや感情が乗せられるようになった」

それは、ジャンプが美しく跳べ、途切れなく破綻がないからこそ完成する作品。
ジャンプも曲の表現となり、10点満点の評価もそこから導き出されてくる。
萬斎さんからも学んだように、その場の雰囲気、その時の感情に合わせて振付を変え、
型の上に何かをプラスし、自分らしさを発見し表現していく。

自分が音を奏でているような演技だけではなくて、
自分はピアニストではないのだから、それとは別な次元で、音と一体となる。


バトルさんからも離れて、演奏者からも離れて、
自分自身が直接、音そのものになる。

そんな事を考えていたのでしょうか。




…続きます

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