四人の彼

バルセロナでの松岡さんのインタビューは、ジャージ姿のアスリートな彼が、試合の熱をそのままに話していた。
他の選手たちの高得点がわかってしまう環境の中で、本当は感じていた怖さを自分に封じ込んでいた。
それは最高に高い壁だけれど、試合が連続していたからこそ乗り越える事ができた。
そして、ハビエル選手への歓声が、彼の負けず嫌いに火をつけた、と。

羽田での空港記者会見は、Tシャツ姿のカジュアルな彼が、長旅の疲れも見せず、真摯に率直に答えていた。
努力に努力を重ねて、重圧にも耐えながら、自分のスケートを追求する。
冷静な分析と尽きない情熱、スケートに対する敬意。
試合はいつでも最善を尽くすべき神聖な場なのだ。

報道ステーションでの生出演は、スーツ姿の紳士な彼が、穏やかに微笑んで話していた。
「SP100点、FS200点がボーダーラインになってきてしまう。もし300点を越えなかったら何と言われるかの恐怖感、自分の演技への自信がなくなる不安を抱えていた」
「みんなが僕を見てくれるのが大好き、は、スケートを好きになった根源。自分が得意な事、自分が好きな事で見てもらえる、評価してもらえるのはうれしい」
「怖さはあるが払拭しようとは思わない。怖さとポジティブな感情は両立していい。バランスを取りながら演技する」
「コールされるまでの緊張感は測り知れない。いつ始めるのか、逃げられない感覚」
「初めてミスなくできたNHK杯SPは、曲より自分の素の感情が出てきてしまった」
「ルールが変われば点数は比較できない。自分はまだ限界ではないのでモチベーションは高い。もっとできると追求していく」
「国内外たくさんの選手がいて誰が自分の点数を抜かしてもおかしくない。自分もさらに頑張り見つめ直して、もっと強くなりたい」



いろんな彼を見てきた。
どの姿の彼にも変わることのない、誠実な態度、真摯な言葉に心ひかれる。

するとまた、もう一度氷上の彼を見たくなる。
リンクを舞う彼ほど、まばゆく輝いて心を震わせるものはない。
恐怖と歓喜の間を行き交う戦慄。
激情と端正の間を駆け抜ける高揚。
一期一会、刹那に賭ける彼がまた見たくなる。



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4回転は跳べて当たり前

「報道ステーション」で松岡修造さんのインタビューに答える羽生選手。
「自分ではどう思っていますか?4回転ジャンプ」と聞かれ、あっさりと

国別対抗戦 2015

「う~ん、まあ跳べて当然ですね。4回転を跳べない自分がいるとすごく腹がたつんですよ。4回転は跳べて当たり前だから。」

国別対抗戦 2015

「何がよくなってみんな4回転が跳べるようになったのか?」と聞かれると
「ああ、そうだなあ、すっごいそれ興味深いですね。
でも今自分がぱっと思いついたのが、4回転を跳べる人がいる事ってすごい大事なんですよ。
4回転を跳べる人が伝承していく、じゃないけど、自分の感覚をみんな伝えているんですよね。跳べてた人達の感覚が、やっと今、スケート界の理論として確立されつつあるんじゃないのかって思うんですよね。」

国別対抗戦 2015

「最初はみんなパトリックに勝ちたかったんですよ。パトリック・チャンに勝ちたかったのが始まりなんです。彼がまだジャンプが安定していない頃に、他の部分では絶対にかなわなかったので、4回転の数を増やして、立ち向かうしかなかった。彼自身が思っている以上に、彼が、この時代をつくったんだと思います。」

国別対抗戦 2015

「それとも4回転じゃなくて5回転の時代になっていくのか。跳べない選手はいないと思います多分。やろうと思えばできると思うんですよ。これ跳べる時代になってくるんじゃないかってちょっとワクワクしている自分がいます。」

国別対抗戦 2015

「フィギュアは本当に底がないので、スピンだってこだわり始めたら回転の速さだったり軸の速さだったりポジションの綺麗さだったり。スピン、ステップ、スケーティングもそうですけど、全てのクオリティを常に追求したいなと。
それがまたフィギュアの面白いところで、それがまたみなさんが見ていて、ファンになる方が多い所なんじゃないかなと思うんですね。」


明晰で深い分析をする羽生選手。
4回転を伝承していき、それがスケート界の理論として確立される。
そして、パトリック・チャン選手の事。
確かにジャンプが不調だった時期がありました。
その間に、彼に勝とうとした他の選手が4回転をみがいたのだとは、なんとも鋭いですね。

スケートについて、その未来について、熱意をこめてしかもさわやかに語る羽生選手の姿。
思考を言語化する能力の高さは素晴らしいと思います。
感覚と理論と、両方を駆使していて、本当に聡明ですね。
そしてこういうインタビューって、やっぱり松岡さんがいいな、と思います。
アスリート同士の理解と尊敬が通う感じがします。

でも5回転って、すごくないですかそれは。
と言いながらも、その前に4Aならありうるかも、なんて思ってしまうけど。

来シーズンはパトリック・チャン選手が復帰してくる。
もちろんハビエル・テン両選手もいる。
すでにそれを見据えているのでしょうね。

そのためにはどうしても、4回転を降りて今シーズンを締めくくりたい。
跳べてあたり前の4回転を失敗したままでなんか終われない。
その気魄のままに、どうか、会心の演技を、待っています。




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羽生結弦選手の雄弁と聡明 松岡さんと織田さんと

羽生選手のファイナルが終わってエキシビションの始まる前、松岡修造さんと織田信成さんが羽生選手にインタビューしているのを見て、羽生選手の言語能力に脱帽しました。
そして謙虚な言葉で抑えても、自意識の強いところがちらちら見え隠れする羽生選手、それもまた彼の魅力なのです!


20141214エキシ前 修造、織田×羽生インタ 投稿者 yuzupinoko

羽生選手は松岡さんにメダルを掛け、「インタビューとかで学ぶことが多かったので」と感謝した。
羽生選手はいつも弁舌さわやというのか饒舌というのか、試合のすぐ後の取材でも、息切れし大汗をかきながらもとにかくよくしゃべる。
全力をつくした試合の後でも、頭をフル回転させて言葉を選びながら出してくる、その姿は彼の聡明さの証明だ。
苦しんだNHK杯の時には、インタビューに答えながら自分の思考を整理し気持ちを立て直す、という超絶技までやってのけた。
ファイナル直後のキスクラでは、通訳なしの英語インタビューにも果敢に答えていた。

思考や感情を言語化するというと、氷上の哲学者・町田樹選手をまず思い出すのだけれど、町田選手が難解な二字熟語四字熟語を駆使するのに対して、羽生選手はごく普通の口語でちゃんと勝負してくるのが素晴らしいと思う。
(大きな声では言えないけれど、リンク外の舌戦も実はひそかな楽しみだったりするので、町田選手の全日本での復活を期待しています)

松岡さんは、中国杯のアクシデントの時リンクサイドにいて、「羽生さんは出場するべきではない」と明言していた。
その事は羽生選手も、おそらく後で知っただろうと思う。
何しろ、日本に帰ってきたら賛否両論の渦が巻き、コーチやスタッフまで批判される騒ぎとなっていたのだから。
しかし、その発言は、元アスリートとして、今もテニス選手を育てている教育者としての松岡さんだからこそ、羽生選手の身と将来を案じるからこそであったことを、彼はすぐに理解したのだと思う。
松岡さんと羽生選手との間に、あたたかな尊敬と共感があり、羽生選手が心を開いていることが、今回のインタビューにもよく表れていた。

一方の織田信成さんは、引退してからそのタレント力を発揮しているし、競技の解説でも選手を褒めてくれて好感度が高い。
しかしこのインタビューでは、「すごすぎてちょっと言葉にならないですね」と逃げたところを「いや、でも、しなきゃだめなんですよ仕事」と羽生選手に突っ込まれてしまっている。
どうやら、ファイナルのメダルを松岡さんの首にかける、というところから、選手としての織田さんが蘇ってきて、動揺してしまったのではないかなと思った。
そこがまた、ドSと言われる羽生選手、ドMと言われる織田さんの面目躍如なところなのだが。
どんな状態にあっても言葉にしてすべてを伝えなくてはならない、それが貴方の仕事なんですよと羽生選手に教えられてしまうとは、織田さんらしい不覚ではある。

織田さんと言えば、よくザヤックルールに引っかかって真っ青になっていたのを思い出す。
今の羽生選手にはそんな危うさはなく、頭の中で演技を組み立て計算する能力も非常に高い。
全力で演技しながらも、瞬間瞬間に自分の演技を記憶し分析し判断していく能力。
いつもの試合でもそうであるのに、中国杯では怪我をした姿で計算を始め、わずかの間に構成を変えて演技して見せた。
聡明な人でなくて、そんなことができるわけがない。


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