使命

昨日、フラッシュ撮影の事を書いたら、私の知らなかったことを教えていただきもし、私もまた少し調べてみました。
日本では会場内の撮影は禁止されている一方で、海外の試合では、もっと以前からあった事のようです。
そして、羽生選手は、どうやら他にも、いろんなことをメッセージとして発信しているようです。

8月のトロントでの取材記事。
羽生結弦「平昌で終わり」の後は金の伝道師になる

「窮地に立ち、乗り越えたからこそ、使命感が生まれた。
 『あのアクシデントがあったからこそ、脳振とうの危険性をより説得力をもって伝えられる。手術後のメンタルケアなども体感しているのでサポートできる。そうなると、スケートだけの話でなく、スポーツ全体になる。そういうところにちょっとずつアプローチしていければいいかな』」

この時は、平昌で引退するかどうかがクローズアップされ、この発言はあまり注目されなかったと思います。
羽生選手は、脳震盪ではなかったはずなのに「危険性を説得力をもって伝えられる」とは、どういう意味なのでしょう。
彼は、自分がそうでないからよかった、自分には無関係だ、という発想はしないのだと思います。

また、着物姿も凛々しい「家庭画報」1月号にはこうありました。

「6分間練習は、自分の調整を優先しなければならない時間なんですよね。
中国杯での衝突は、そういった緊張感、不安感の中で起きた事故だと思います。
でも、やはりあの衝突事故は自分でよかったと今は思います。
もちろん、自分の体は怪我をしたし、家族や周りのかたがたにはすごく迷惑をかけましたが、僕という存在に起きたことで、その危険性を世界に発信し、議論するきっかけになったとも思うんですよね。
また新たな使命をいただけたなと感じてもいます。」

残念ながら、6分間練習のやりかたは依然として変えられていません。
でもこの夏、ISUで議定書が作られ、事故の対応については細かなマニュアルが定められ、明文化されました。
海外試合に日本の医師が帯同するようになり、選手の怪我や病気に対応してくれるようにもなってきました。
自分の身体を痛め苦しんだことから、スケート界全体へ貢献する「使命」を見い出し、発信していく。
それは、過ぎた事は責めずこれからのために尽くそうとする、羽生選手らしい素晴らしい行動だと思います。


「KENJIの部屋」では「自分でもあの時になんで4回転回れたんだろう、なんで4分半あんだけ滑れたんだろう、不思議でしょうがない」と言っていました。
最近、オーサーコーチが「今は正直に言えるが、衝突が起きた時、ある種のトランス状態にあった」と発言したそうです。
トランス状態とは、具体的にはわかりませんが、鬼のような形相になってもおかしくない場面で、彼が微笑していたのはそのせいだったのかもしれません。


友人から、こんなメッセージをもらいました。
フラッシュ撮影が危険なら、怪我をしたまま演技する事の危険を想像してみてほしい。

また、別の友人からはこんなふうに。
彼は、何より「生きること」を伝えているはず。
「命より演技が大切」なのではなく「生きるために演技が大切」なのだと思う。


大事な大事な、未来ある選手です。
今後、技はますます高度になり、それとともに危険も増していく事は想像に難くありません。
もしも、もしも万一、何かが起こった時には、
未来のために、今日は泣いて撤退しよう、一緒に泣くからと言ってほしい。
そしてきっと次は笑おう、ずっとそばにいるから、と言ってほしい。


一心不乱に、命を燃やして演技をする羽生選手には、
どうか周囲の方も、同じだけの覚悟をもって、真剣であってほしい。
同じだけの使命を抱いていただけると、信じたいと思います。






メッセージをくださったかたに感謝いたします。本当にありがとうございました。
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中国杯2015・男子FS





ハビエル・フェルナンデス選手優勝、ボーヤン・ジン選手2位、おめでとうございます!

ボーヤン選手の演技をライストで見ていました。
何度も回線が切れたのですが、そのたびにスコアカウンダ―がどんどん上がっていて、目が廻りました。
4Sは転倒してGOE-4をもらってしまっていますが、基礎点だけでも102.7あります。
確かにフリーとなると未完成なところが目立ってしまうし、PCSは低いです。
でもまだ18才なのです。

ハビエル選手は、ひげを剃って変身する演出なのですね。
いつもの彼に戻っていました。
でもジャンプはあまり決まっていなくて、どうなることかとひやひやしました。
こういう、フランク・シナトラが代表するような、小粋な、古き良きアメリカの雰囲気を出すのが彼は上手ですね。

なんとも衝撃的なボーヤン選手のシニアデビュー。
今年はまだまだかもしれませんが、目指すべきは平昌オリンピックなのです。

そして怪我のために欠場した小塚崇彦選手、ロシア杯までに充分に回復されますように、お祈りしています。



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中国杯2015・女子FS

本郷理華選手、これはもう、素晴らしい!



まず、この衣装にひと目で射抜かれました。
シンプルなデザインだけれど、シックで、深い色合いが彼女によく似合っています。
肩から腕のラインがとてもきれいで、長い手の表情を強調して本当に素敵。
ジャンプやスピンで、少しだけ明るさのあるスカートのグリーンがひらめくのも美しい。
ジャンプが決まるたびに、彼女の脚がリズムを刻むたびに、どきどきしました。
特に2A+3T+2Tはゴージャスでした。
ラストは、彼女と一緒に両手をあげて叫んでいました。
堂々とした演技で素晴らしい高得点!


そして浅田真央選手、優勝おめでとうございます!



本郷選手がリンクに残した高揚感をさっと変えて、一瞬で彼女の、淡い紫の色に染めてしまいました。
それは、しみ入るような、愛の悲しみでした。

浅田真央 CoC

ため息がでるほどにきれいなトリプルアクセルのあと、ジャンプはなかなか決まりませんでした。
けれども最後まで、思い出の残像をなぞるような情感にあふれ、澄みきった水面にさざ波が立つような、しなやかで繊細な美しい演技でした。


あの、はつらつとした天真爛漫な少女が、10年という長い月日を歩んでその美しさを深め、また帰ってきてくれた。
高度な技術を追求して一歩も引かない、強い心とともに。
彼女の笑顔も、彼女の涙も、ずっと見てきた。
あの素晴らしい、宝物のような記憶があれば、それでもう充分だと思っていた。
でも、彼女はそうではなかった。
もっと明日がある、もっと未来があると言っている。


今日の内容には満足していないだろうけれど、これからまた、しっかりと歩んでいく浅田選手を応援したいと思います。
選手のみなさん、おつかれさまでした!




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中国杯2015・SP

浅田真央選手の、その名の通りの、「素敵なあなた」。



ああもう、本当にきれい!
妖艶というよりはやはり、お茶目な清潔感にあふれている浅田選手です。
ゆっくりと、わざとじらすようにしながら、小気味よく盛り上げていく感じもおしゃれで素敵。
彼女と一緒にスウィングする、とても楽しい演技でした。
世界最高難度のプログラムについてはこちらの解説で。
真央の男子並み高難度プログラム今後楽しみ 岡崎真氏が解説


そして男子は、ハビエル・フェルナンデス選手が93.19、ボーヤン・ジン選手が90.05を出すという、ハイレベルな試合でした。



ハビエル選手の「マラゲーニャ」、とても素敵ですね!
フラメンコギターで踊りこなす前半と、ドミンゴのヴォーカルで、重厚・華麗な後半。
ショートだから、対照的な二層構造の明確さがまたいい、と思います。
精悍で情熱的な、スペインの顔をしたハビエル選手。
これもまた、ハビエル選手にしかできない作品なのでは。



そしてボーヤン選手は、最初の4Lz+3Tだけで19.19点です。
スピンやステップでもちゃんとレベルを取っています。
PCSは今は確かに低いですが、将来はどれだけ伸びるかわかりません。
世界にはいったいどれだけの才能があふれているのだろうと、ため息が出そうです。


今夜、選手の皆さんのフリーでの素晴らしい演技を、楽しみにしています。



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「KENJIの部屋」第5回 あの日の涙

羽生結弦選手エピソード5(前編)

~一番最近泣いたことは?
「なんですかね。世界選手権で2位になった時はめちゃくちゃ泣きましたけど。それくらいですかね。何泣いたかな?結構泣き虫なんですよ僕。意外と泣き虫で。しょっちゅう泣いてるんですけど、あんまり表に出さないですけど。」

「中国で2位になれて、点数が出た時にびっくりして、こんなにもみんなが応援してくれたから。それこそ基礎点の話じゃないけど、ここまでなんとかしっかり回って点数が取れたんだという」

「皆さんの力を感じて、わーって泣いちゃって。隣にブライアンもいたので、ブライアンの力もそれこそ感じて。この状況でも自分のことを普通に支えてくれたので。いろいろこみ上げて来てわーっと泣いたのを覚えています。あれがたぶん一番の号泣だと思います。世界選手権は悔しくてうぅぅぅ~ってなったけど、中国の時はヒクヒクヒクヒク泣いてました」

~人生最大の大失敗は?
「いや~~、最大の失敗って思ったことないです」
「そういうのはないですね。これだけしなければよかったみたいなことですね?ないですね。常にそういう事ばっかり考えているので。でも後悔はほとんどしないです、基本的に。試合の時とか例えばショーの時に、あ、こうすればもっと跳べたのに、っていう後悔はありますけども」
「これしたから何か人生に影響するかっていうのは考えたことがないです。それが全部運命だと思っているので。かっこいいこと言った(笑)」


あの時泣いたのも見ていたし、何も後悔していないのも、うん、知ってるよ、と思いながら聞いていました。

私には医学の知識もありませんし、あとで怪我の状態を伝え聞いただけで、出場の可否を断言するなどできません。
それでも今、あのフリーは出てはいけなかったと思っています。
あの演技を観て羽生選手に惹かれてしまったのにもかかわらず。

今、ネットやテレビでうっかりとあの時の映像を目にすると、正視する事ができません。
その恐ろしさとともに、その死の匂いとともに、その危険な美しさにまた魅入られてしまいそうで。
「世に出してはならないもの」と能登さんが怖れられた、その通りだったと思います。

友人が言った「自己犠牲」という言葉を思い出します。
それは、観念としては美しいかもしれないけれど、決して崇めてはならないものだと思っています。

狂気にも似た、とも称される演技を見せる彼。
空中に身体を投げ出すようなジャンプを跳ぶ彼。

あの時彼は、スケートの神と悪魔との間で取引をし、賭けに出た。
自分の身体を捧げる賭け。
スケートの神の前で殉教者になる事を選んだ。
審判は下り、彼は生きて帰ってきた。
「それが全部運命だと思っている」



最近、世阿弥の事を少し勉強していて、「離見の見」という言葉を知りました。
自分が観客からどう見えるかという意識、さらにそれを俯瞰して見る。
目を前のほうに見すえつつも、心を後ろのほうに置く。
あの時、基礎点を積み重ねる事に一心不乱だった彼は、観客からどう見えるかを忘れていた。
けれどもキス&クライに生還した時、観客が自分のために祈っていてくれたことを知った。

だから子供のように、あんなに泣きじゃくったのかな、と思ったりしています。




※ 続きます

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