ミーシンコーチと彼

スケートカナダのバックステージ。フリーの演技前の様子です。



ミーシンコーチに近づいて、ひざを折り、目線を合わせて何か話しかける羽生選手。

2015 SCI Men Backstage 1

右手を差し出してくださったコーチに、ていねいに両手で握手を返します。

2015 SCI Men Backstage 2

かけてもらった言葉に、こくんとうなずく羽生選手。

2015 SCI Men Backstage 3

ミーシンコーチがどんなに偉大なコーチなのか、それはもう、書きようがないくらいです。
なにしろ、かつてヤグディンとプルシェンコを育てた、ロシア・スケート界の大御所です。
ジャンプの技術についての論文で学位を取った論理派で、スケート界に多大な影響力がある。
羽生選手のことは、ソチの以前から賞賛してくださっていました。
そして今でも、若い選手の指導にあたっていらっしゃるのですね。

波乱のSPの翌日。
狭いこの部屋で、チャン選手と一緒にウォームアップする羽生選手の集中…について書こうかな、とも思ったのですけれど。
それよりも、この何気ない瞬間がうれしくて、どうしても記事にしたくなりました。



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Yuzuru Hanyu Seagull

スケートカナダのEXの練習中、ひとり黙々とジャンプの練習を続ける羽生選手の姿がありました。



空いているリンクの反対側に行っては、イーグル・ジャンプ・イーグルを何度も繰り返しています。
イーグルにトリプルアクセルをはさむ、目の覚めるような美しい技には、いままでも魅了されてきました。
でも彼は、トゥループでもサルコウでも、なんでもつなげることができるのですね。

この動画につけられていた、海外の方からのコメントを引用させていただきます。

"But way off alone, out by himself beyond boat and shore, Yuzuru Hanyu Seagull was practicing."

そうか、「かもめのジョナサン」ね。
そんなふうに見えるのかしら。
ひとり群れから離れ、完璧な飛行だけを追求し続ける孤高のかもめ。
形而上学に生きる彼。


試合は終わった。
あとはもう、リラックスして楽しむだけ。
そんなみんなをよそにして、少し背をまるめて、リンクを周回し続ける。
軌道を探し当て、自分のジャンプをひたすら跳ぶ、何度も、何度でも。
そして、もしかしたら彼にとっては虚しかったのかもしれないその時間に、確かな意味を与えようとする。


「Ice jewels」という雑誌にあったエピソードを思い出します。
~ イーグルからのアクセルは、小さいころから都築先生に練習させられて、それが普通、基本の動きだった。
ジャンプが跳べなくなってくると全部イーグルからやらされていた ~


心がざわめき、曇るときには、原点にかえって自分と向き合う。
その専心が、明日への意志を呼び覚ましてくれる。
宙へと高く、美しく飛び出す勇気を授けてくれる。
この時彼は、イーグルとジャンプとを繰り返しながら、子供時代、厳しい師の教えを受けて、世界を夢見た日々に戻っていたのかもしれない。





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スリリングなシーズン

偉大な選手の、偉大であるからこその迷いに、真っ直ぐに挑む彼が火をつけ、焼き尽くしてしまう。
そんな事が、以前にもあったような気がする。

練習のリンクで、狭い通路で、バックステージで、すれ違いながら目も合わせず、お互いの距離を測りあう緊迫感。
整えてきたはずの身体と精神に齟齬が生じる。
熟知していたはずのルールに陥穽がある。


これまで、チャン選手の言葉を何度聞いても、彼がどうしたいのかよくわからず、無限の迷路に誘い込まれるようだった。
それは、1年ぶりの大きな舞台に帰ってきて主演を期待されることの重圧に、彼がやっと耐えていたからだと、後でわかった。
ただひとつ、「僕はユヅルのやらないことをやる」、それだけが揺るがない彼だった。

羽生選手のショートを、膝を抱えて爪を噛むようにして、じっと見つめていたチャン選手。
傷ついた子供のように自分を防御していた。
勝利の女神と彼の目が合う。
さあ、ここにチャンスがある。
ずっと待ち続けたお前のために。
何のために戻ってきたのか、本当のお前を見せておくれ。

革命のエチュード。
時代のうねりのような低音の轟きを、止めようのない大きな波のようにして表す。
それでいて、強拍の一瞬を捉えて跳び、その解決とともに着氷する。
しかも彼は何度か突然静止する。
静止してはこちらを不安にさせ、また動き出してはそれをほぐしてみせる。
氷が「地」なら、彼はそれをつかさどろうとする。

「ユヅル、僕のショパンはこうなんだよ」


なんて切ない、なんてスリリングなシーズンの始まりだろう。
しかもこれから、世界で戦うべき相手は、彼ら二人だけの対決など許してはくれないだろう。
胸が痛むほどの期待に、息をひそめて、喝采が彼のものである日を待っている。



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4回転を3回跳んだ日

2015年10月31日、スケートカナダ・フリースケーティングの、羽生結弦選手のプロトコル。

2015 カナダ スコア ゆづ

4S、4Tそして4T+2T。
3本の4回転ジャンプが認定されています。
2014年11月18日、1年前彼が挑もうとしていたその構成を、公式の試合でついに実現させました。
やりぬいた彼を、心から尊敬し、讃えたいと思うのです。

後半の4回転。
一瞬、片手をついた体勢からすぐさま身体を起こし、みごとに2Tをつなげました。

2015 カナダ杯 4T2T 113

2015 カナダ杯 4T2T 114

2015 カナダ杯 4T2T 115

2015 カナダ杯 4T2T 116

2015 カナダ杯 4T2T 117

2015 カナダ杯 4T2T 210

内心、手をついたときには、ああ…と思いました。
けれども、あり得ない角度から彼はまた跳びあがりました。
あんな体勢になりながら、そのままで、氷にねばり付くようにして立て直した彼の右脚。
見えない何者かが彼をぐっと押し上げ引き上げたかのように。

残念ながら試合の結果は2位でした。
ショートではルールに阻まれ、フリーではチャン選手に阻まれました。

彼の言葉をひろってみます。
「パトリック・チャン選手と一緒に試合しても何も変わらないと思っていたが、実際にはいつもと違っていた。少し興奮しすぎていた」
「まだまだ4回転も手をついてしまったりしていますし、コンポーネンツの点は、全部9点台を狙わなくてはいけない、または、狙えるようなプログラムだと思うので、あとは今度、ショートがちゃんとできた後に、またこのような思い切った演技ができるように、日々精進していきたいなと思っています。」
「太陽の光をもらったからこそその下にうつる(自分の)影が見えて、過信だとか、またはまだまだ足りないところとだか、そういった影の部分が見えたからこそ、自分自身が光っていけるようなスケートをしなくてはいけないなと」
「失敗があったからこそ、もしかしたら気合いが入って、気を引き締めてフリーに臨めた結果がこれだったのかもしれません」
「課題が出たという事は、まだまだ自分の限界じゃないと自分のなかでは感じられることができた試合だったと思うので、もっともっと自分の限界を作らずに、どんどんチャレンジしていきたいなと思いました」

本当はチャン選手の存在を意識していたことを、潔く正直に話しています。
体調のコントロールと共に、精神のコントロールもまた、難しかったのでしょう。
ジャンプを成功させるために他の部分を抑えた面も、次への課題。
課題があれば彼はまた強くなる。

FS カナダ 96

ショートの不覚から、フリーの覚醒。
自分に負けたのかもしれないけれど、でも、自分に勝った。
だからあらためて、羽生選手、本当におめでとうございます!





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憤怒の「SEIMEI」

スケートカナダの「SEMEI」。
怒髪天を衝くほどの怒りをあらわにする彼の姿に、天平の武神を思い出した。

薬師寺 バザラ

冒頭に結んだ刀の印に、彼はその息を吹き込み、一振りの美しい日本刀に変えた。
その細く凍りつくような真剣で、自分の身を切らんばかりに、危険な舞を舞い始める。

FS カナダ 111

鼓動のように打ち鳴らされる太鼓の響きが、魂を揺さぶり起こし、昂揚させる。
誰も到達したことのない未知へと挑む彼に、晴明が憑依する。

FS カナダ 113

繰り返される跳躍とともに、激情は高なり、何度も鋭い視線を投げかける。
射るように、挑むように、えぐるように。
自分をさらけ出し、これでもかと迫り、追い詰め、切りかかる。

FS カナダ 112

自分の身体、自分の不甲斐なさに、怒りが決壊し、彼を鬼にする。
矯めようとしても決して折れない彼の牙、抑えようとしてもみなぎり迸る彼の激しさ。

FS カナダ 114

荒ぶる「SEIMEI」。
息をつき、喝采に応え、ようやくその刀を納めて、現し世へと帰ってくる。
滴る汗、呼吸をおさえて、じっと審判の時を待つ。
「SEIMEI」は彼自身だから、ある時は静かにたゆたい、ある時は美麗に煌めき、ある時は炎のように激高するのかもしれない。





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