ダイヤモンドをさがして

「フィギュアスケート 美のテクニック」
この本は野口美恵さんが書かれ、樋口豊先生が監修を、太田由希奈さんが演技のモデルを務められた一冊です。
2011年の発行なので、その解説、内容には、日進月歩するスケート界に合わなくなってしまったところも多くあります。
羽生選手については、2010年のロシア杯でチャン選手のエッジワークに感動し「これまでエッジが深いと加速するなんて思わなかった」と言っているような、まだそんな状態です。
羽生選手の目を開かせたそのエッジワークこそ、どんなにフィギュアスケートが進歩しても変わる事のない、スケートの神髄です。

フラットではなく、インとアウトのエッジに深く乗って、円の軌道を描いていく。
そのパワーを足元から身体全体へ伝えていく。
バレエのような美しい動作を基本に、氷上で円を描き、流れとともに「滑る」ことが、フィギュアスケートの美のテクニックである。

樋口先生は、足の裏の重心とブレードの滑る場所とがマッチする一点、それを「ダイヤモンド」と呼んでいらっしゃいます。
その一点に乗って滑っていく理想のスケーティングは、教えられても見つけることはできない。
自分の感覚の中で、苦労してつかんでいくしかない。

そして、正しいエッジに乗って、高さと飛距離があり、降りてなお流れて行くジャンプは、それ自体が一つの表現である。
それももちろん、スケーティングがしっかりとできているからこその賜物である。


そしてこの本には「エッジワークの欧州、スピードの北米」と、追求されてきたスケーティングのタイプの違いが解説されています。
正確なカーブを描くことに重点を置くロシアのスタイル、速度に乗って伸びやかに滑る北米のスタイル。
そのアプローチの仕方の違いは、言われてみれば、そう、思い当ることがいろいろあります。
もちろん、その両方を追い求める事に、究極のスケーティングがあるのかもしれません。


さて、この本では清塚信也さんがショパンについて話していらっしゃいます。
クラシックは美学、哲学であり、間接的な表現である。
音楽には和音(縦)とメロディ(横)があって、ショパンはメロディで音楽を表現する、それが彼の美徳である。
ライバルのリストは、逞しい身体と大きな手で超越技巧のピアノを弾く。
病気がちで手の小さいショパンは、違うやり方でサロンに集う貴族の心をつかむ。
場の空気を読み、臨機応変に曲を選び、求められるものに応えていく。

とても、胸に響きました。




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スリリングなシーズン

偉大な選手の、偉大であるからこその迷いに、真っ直ぐに挑む彼が火をつけ、焼き尽くしてしまう。
そんな事が、以前にもあったような気がする。

練習のリンクで、狭い通路で、バックステージで、すれ違いながら目も合わせず、お互いの距離を測りあう緊迫感。
整えてきたはずの身体と精神に齟齬が生じる。
熟知していたはずのルールに陥穽がある。


これまで、チャン選手の言葉を何度聞いても、彼がどうしたいのかよくわからず、無限の迷路に誘い込まれるようだった。
それは、1年ぶりの大きな舞台に帰ってきて主演を期待されることの重圧に、彼がやっと耐えていたからだと、後でわかった。
ただひとつ、「僕はユヅルのやらないことをやる」、それだけが揺るがない彼だった。

羽生選手のショートを、膝を抱えて爪を噛むようにして、じっと見つめていたチャン選手。
傷ついた子供のように自分を防御していた。
勝利の女神と彼の目が合う。
さあ、ここにチャンスがある。
ずっと待ち続けたお前のために。
何のために戻ってきたのか、本当のお前を見せておくれ。

革命のエチュード。
時代のうねりのような低音の轟きを、止めようのない大きな波のようにして表す。
それでいて、強拍の一瞬を捉えて跳び、その解決とともに着氷する。
しかも彼は何度か突然静止する。
静止してはこちらを不安にさせ、また動き出してはそれをほぐしてみせる。
氷が「地」なら、彼はそれをつかさどろうとする。

「ユヅル、僕のショパンはこうなんだよ」


なんて切ない、なんてスリリングなシーズンの始まりだろう。
しかもこれから、世界で戦うべき相手は、彼ら二人だけの対決など許してはくれないだろう。
胸が痛むほどの期待に、息をひそめて、喝采が彼のものである日を待っている。



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パトリックからの挑戦状

いつのまにかカナダへと旅立っていた羽生選手。
そのあざやかさにまた、心魅かれてしまいます。
黒いマントをさっとひるがえして去っていくファントムが見える。
仮面の下はすでに臨戦態勢。
なぜってカナダにはパトリック・チャン選手がいるから。

国別対抗戦 2015

チャン選手に対抗するために、他の選手は4回転を磨いたのだ、と分析した羽生選手。

一年間休養していたパトリックは余裕を持ってシーズンに臨んでくる。
しかもそのフリーはD. ウィルソン振付の「ショパンメドレー」だという。
まるで羽生選手に挑戦状、いや果し状を送ってきたかのようだ。



これは、すごい。
斬新なショパンを、チャン選手が見事に表現している。
「革命」は羽生選手にも似合うと思っていたのだけれど。

オフに入ったばかりなのに、もう次のシーズンは始まっていたのか。
4月終わりまで試合に出続けた分を取り戻そう…なんて、うっかり思い込んでいないよね。

クリケットのみなさま、羽生選手の逸る心を落ち着かせて、体調を整えながら、よいトレーニングをさせてくださいね。
そしてまた、心を奪い去っていくような素敵なプログラムを、お待ちしています。


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ユヅルはカメレオンになります

「G2」に掲載された野口美惠さんの記事「羽生結弦 完全復活のウィニングロード」。
何度読み返しても気になるのは、ショートの「バラード1番」についての一節です。

「オリンピック王者の座に安住することなく新しいスタイルを追求する、
次のオリンピックを見据えたプロセスの一環です」



なるほど、「パリの散歩道」のけだるいブルース・ロックから、クラシックの王道へと転換してイメージをがらりと変える。
オーサーコーチにはもちろん、次のオリンピックへ向けた戦略構想があるのですね。
シーズンごとに何を見せていくか、プログラムを変化させながら、評価を高めていく。
そしてもちろん、オリンピックでは最強の演技構成で頂点に挑むプラン。

そこまではわかります。その次です。
「この曲で、ユヅルはカメレオンになります。」

ワールドフィギュアスケート

この彼が、カメレオンになる

だめだめ、ならないで…!
いやいや。
これは「たとえ」ですよね、比喩、metaphor、体色変化するカメレオンに。
修辞技法、生物形象、わかります。

バラード1番

「彼が今までに見せたことのない演技なのです。
しっとりとした繊細さ、安定感あふれる包容力、脆いほどの美しさなど、
ユヅルは色を変えながらスケートをするのです」

バラード1番 ファイナル

繊細さ、包容力、脆いほどの美しさ、でもそれだけではない。
静謐さの一方で、激しい情熱や、力強さや、あふれる生命力を感じさせる。
様々に表情を変える音楽を受け止め、全身で放ちながら、高度な技を絶え間なく繰り出していく。
だから、目も眩みそうな、息もつけないほどの、2分50秒なのですね。


でもカメレオンに喩えるのは、やめてね。


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グランプリファイナル・ショートで羽生結弦選手1位!

バルセロナでのGPファイナル・SPで羽生結弦選手は94・08点で首位!
見ている方は息詰まる思いで祈るばかりでしたが、羽生選手本人はとても集中しかつリラックスしているように見えました。
とにかくスムースできれい、柔らかくなめらかで丁寧、優雅で洗練されていた!
失敗もしたので最後は笑っていたけれど、とてもうれしそうで幸せそうで、滑る喜びにあふれているように感じました。

重力から解放されたような美しい4回転、3Aにつないだイーグル、スピードがあって足さばきの鮮やかなステップと、見どころがいっぱいだった。
ショパンのピアノ曲の繊細さ、哀愁を帯びた美しさをよく表現していると思った。

他の選手もミスが多かったけれど、フェンスすれすれのシーンがあったような気がしたので、もしかしたらリンクが狭いのかもしれない。
羽生選手も少し構成を変えていたけれど、そのあたりの軌道の調整があったのかな。

94点だなんて、久しぶりに見る高得点だった。
とにかく体調はよくなっていて、精神的にも落ち着きしっかりしているように思えた。
フリーではぜひ、会心の笑顔を見せてほしい。
応援しています!


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